合理的なドイツ人は毎日掃除する「絶対に家が汚れないドイツの当たり前な習慣。」

[記事更新日]2017/05/28

yogorenai

2014年に行われたサッカーW杯準決勝で、開催国のブラジルを相手に7対1の大差で勝利し、そのままの勢いでアルゼンチンを破り優勝したサッカードイツ代表チームの強さの秘訣は、華麗な個人技に頼るのではなく、短いシンプルなパスをつないでいく超合理的な戦略にありました。

また、近年激安スーパー界の風雲児として欧米諸国を席巻しているドイツ発ディスカウントストアALDIが激しい競争に勝ち残り続けている理由も、商品を段ボールの箱に入ったまま陳列したり、取り扱う商品数や店舗スタッフも少なめにして効率化の向上と経費削減を進めるなどの徹底した合理化にあります。

そういった合理主義はドイツの国民性といっても良いほど日常の至るところに浸透していて、「掃除界のカリスマ」と呼ばれる沖幸子さんがドイツは世界で一番キレイな国であると断言する理由も、合理性を重視したドイツの婦人たちが実践しているドイツ式の掃除法にあるのだそうです。

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沖さんがドイツで生活をしていた頃、訪れた家はどこも部屋の隅々まで掃除が行き届いていて、さぞかし婦人方は掃除好きで、時間をかけているのだろうという印象を受けたらしいのですが、実際のところは掃除嫌いの人が結構多く、あまり時間をかけるのではなく、母から伝えられた「掃除の法則」を守ることで、家の隅々まで年中ピカピカに保っているのでした。

その「掃除の法則」は、ドイツ人の「楽しくて豊かで気持ちのいい生活には清潔な環境が欠かせないため、日々の掃除は嫌いでもやらなければならない」という考え方から生まれ、掃除嫌いであったり、時間のない多忙な人でもできるようになっています。

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ドイツの田舎町では近所中が一斉に窓拭きを始める景色を見ることができるらしいというと大袈裟ですが、ドイツ人は同じ曜日の同じ時間に窓を拭いたり、食器を洗うなど、何をするかの掃除スケジュールが決まっているそうです。

掃除嫌いの主な理由として、掃除をしなければいけないという社会的なプレッシャーがあるらしく、しなければいけないこととして憂鬱な気分になってしまうそうですが、
ドイツ式のように掃除に割く時間をスケジュールに入れてしまい、洗顔や歯磨きのように掃除をルーティン化すれば、何も考えずに掃除をすることができる上に、少ない時間と労力で常にピカピカな家をキープすることができます。(1)(2)

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↑掃除を歯を磨くように習慣化すれば、そう簡単に汚れが溜まることはない

岩手大学が行った、ケチャップや醤油など身近な調味料や油、泥など日常的についてしまいがちな汚れが、経過時間によってどれほど洗浄効果に影響を与えるのか調べた研究によると、ほとんどの汚れが時間の経過とともに落ちにくくなり、その中でも影響の大きかった油汚れは、付着より2週間経つと、汚れが付着した直後と比べて洗浄効果が約半分にまで下がってしまいました。

放っておいたために水垢やシミ、サビの原因になり、石鹸カスや食べ物の脂分が汚れのボンド役になることで手間暇をかけなければ落ちない汚れになってしまいますので、気づいた時に汚れている場所だけをさっと一拭きすることで手間も時間も体力もかけずに常に綺麗な部屋を保てます。(3)

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↑放っておくと汚れは落ちにくくなり、物はやがて朽ちてしまう

人間の集中力の波は15分周期と言われていて、
掃除も一度に行う作業は15分以内と決めておくことで、忙しい人でも掃除嫌いの人でも気軽に取り組めるでしょう。

年末に行われる大掃除は、起源を神道におけるすす払いと呼ばれる宗教的行事にもち、新年に神様を気持ち良く迎える準備をし、汚れとともに過去の罪や穢れを掃き清めるといった意味がありましたが、
その宗教的意味合いが失われた現代においても、その年一年間の汚れを落とすためにほとんどの日本の家庭で行われる国民的行事です。

しかし、綺麗な状態をキープするために毎日少しずつ掃除を行うことを美徳とするドイツ人にとっては、年に一度丸々2、3日ほどかけてこびりついた汚れやカビをヘトヘトになりながら掃除する、極めて面倒で非効率なやり方は理解されないでしょう。(4)

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↑母から娘に伝えるシンプルな掃除法

日常的に掃除をすることを必然とするドイツには、「整理整頓をすれば人生の半分は上手くいく」という諺があるのですが、少しずつでも頻繁に掃除を行う習慣は、そのモノだけでなく、我々の心をも整えてくれると考えられています。

ドイツのフランクフルトでプレーをするサッカー日本代表キャプテンの長谷部誠選手は試合に負けた次の日など、部屋の整理整頓をすることで散らかっていた心の中を掃除するのだそうです。(5)

長谷部選手は、心を車のエンジンのように常に調整するものだと考えていて、メカニックがレース後にはエンジンについた汚れを取り、こまめに油を刺すように、敗北後の後悔や惰性で汚れた心を、部屋の整理整頓をすることで整え、常に安定した心を持ち続けることができるといいます。(6)

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↑いつまでも敗北を引きずっているわけにはいかない

また、パリの三つ星レストランで修行をし、現在は白金高輪でコート・ドールというレストランのオーナーシェフをしている斉須政雄氏は、楽しみながら掃除をして整理整頓をすることで、自分の気持ちを前向きに仕事に臨める良い循環の輪の中に戻すことができると、日本を代表するフレンチ巨匠4人に数えられるようになった今でも、1日4回の掃除を率先して行っているのだそうです。

掃除の重要さはパリでの修行時代に、当時のオーナーシェフから教わったそうで、彼は料理をせずに一日中どこかの掃除をしていて、斉須氏は初めその真意が全くわからなかったらしいのですが、時が経つに連れ、掃除は部屋だけでなく、従業員の身だしなみや働く姿勢にも影響を及ぼし、些細なことにも注意を払えるようになるため、それがお客様の満足につながるということを学んだと、次のように述べてました。

「すべての発露は掃除にあります。良い循環の一番の座標軸。掃除はいつもそこに立ち戻ってゼロにしてくれることだと思う。」

心をあるべき場所に戻し、前を向けるようにするために掃除をする斉須シェフや長谷部選手のように、掃除は未来へと進むために必要な助走のように考える人は、掃除に本気で意義を見い出すことができるのかもしれません。

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↑掃除をすることと料理をすることは同一線上にある

「整理整頓を覚え、好きになりなさい。時間と手間を省いてくれるから。」

手間暇をかけないでも、自分の生活環境を常に綺麗な状態に保つことができ、乱れた精神までも整えてくれる、毎日少しずつ行う掃除は、我々が日常で行える最も合理的な行動だということをドイツ人は昔から知っていたのかもしれません。

  1. 門倉多仁亜 「ドイツ式 暮らしがシンプルになる習慣」 (2011, ソフトバンククリエイティブ株式会社) p58
  2. 沖幸子 「ドイツ流楽しい掃除の法則」 (2010, 三笠書房) Kindle 15
  3. 沖幸子 「ドイツ流楽しい掃除の法則」 (2010, 三笠書房) Kindle 186
  4. 沖幸子 「ドイツ流楽しい掃除の法則」 (2010, 三笠書房) Kindle 224
  5. 長谷部誠 「心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習性」 (2011, 幻冬鶏舎) Kindle 355
  6. 長谷部誠 「心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習性」 (2011, 幻冬鶏舎) Kindle 157
  7. 門倉多仁亜 「ドイツ式 暮らしがシンプルになる習慣」 (2011, ソフトバンククリエイティブ株式会社) p52

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